TL;DR
- デスクトップでのオーガニック1位の中央値は画面上端から約590ピクセル下に位置する。2位は1,000ピクセル超下方 — 標準的なノートPC画面の折り返しより既に下
- 2024年1月時点では58.5%の検索で1位がオーガニック結果だった。2026年1月にはこの数字が44.3%まで低下し、初めて1位が「オーガニックではない」が多数派になった
- 従来のオーガニック1位がSERP表示直後に完全表示される確率は約68%。最悪の10%のケースでは1位ですら2画面分下に沈んでいる
- 情報系クエリでは AI Overview、ナレッジグラフ、画像パックがファーストビュー領域の半分近くを占有。商業系クエリでは商品カルーセルが同様に支配
- FAQリッチリザルトはオーガニック結果を50%以上大きくできる。順位だけでなくサイズが可視性を決める。これからのSEO指標は「クリックシェア」ではなく「可視性シェア(ピクセルとインプレッション)」
登壇者について
Tom Capper — Heads up the Search Science team at STAT & Moz
TomはSTATとMozでSearch Scienceチームを率いており、長年SERPの進化とSEO測定の研究を続けている。順位追跡ツールベンダーに勤めながらも、業界が順位を主要なSEO指標として捉え続けることへの異議を唱え続けてきた人物 — AI OverviewとSERP機能が従来のオーガニック結果を押しのけ続ける現状において、その立場はますます緊急性を帯びている。

問題: The Great Decoupling(大いなる脱連動)
Tomは、SERPの進化を追っている人なら誰でも知っている言い回しから始めた: 状況は変わった。
約1年前まで、ペイドではないポジション1の結果の大多数は伝統的なオーガニックだった — SEO業界が測定フレームワークを構築してきた「10本の青いリンク」のポジション1。それが事実ではなくなった。今や、SERPの最初のペイド以外の結果は、たいていの場合、伝統的なオーガニック結果ではない。AI Overview、ナレッジパネル、商品カルーセル、その他のSERP機能になっている。

数字は厳しい。2024年1月時点では1位の58.5%がオーガニック結果だった。2024年7月には56.5%、2025年1月56.7%、2025年7月46.4%、そして2026年1月には44.3%まで低下した。初めて、伝統的なオーガニックがポジション1で「少数派」になった。
Tomはこれを The Great Decoupling(大いなる脱連動) と呼ぶ: ランキング1位とページ最上部での可視性が信頼できる関係にあった時代の終わりだ。
重要な点: これは有料検索の話ですらない。Tomが描写しているシフトは、広告が登場する前の段階で起きている。
新しい2つの指標: ポジションと高さ(ピクセル単位)
新しいランドスケープを理解するため、Tomは順位と並行して全SEO担当者が追跡すべき2つの指標を提案した:
- ポジション(Position): SERP上端からの距離、ピクセル単位
- 高さ(Height): 結果自体の縦サイズ、ピクセル単位
典型的なオーガニック結果は約100ピクセルの高さ。典型的なノートPCのビューポートは約800ピクセル。スマホはさらに狭い。これらは抽象的な数字ではなく、結果が実際に見られるかどうかを決める制約条件だ。
デスクトップのデータ: ポジション1は既に折り返しの下
TomはSTATから引き出したデータを提示した。どのキーワードセットでも再現可能なデータだ。状況は厳しい:

- デスクトップ・ポジション1オーガニックの中央値: 上端から約590ピクセル
- ポジション2: 約1,043ピクセル下 — 既に標準的ノートPCビューポートの外
- ポジション3以降はさらに沈む: 1,280 / 1,633 / 1,927 / 2,210 / 2,449 / 2,702 / 3,010 / 3,515 ピクセル
- 「1ページ目」の最下部に到達するには4画面以上のスクロールが必要
Tomの皮肉な提案: 「もう『ページ5』と呼んだ方がいい」。
可視性の数字もこれを裏付ける:
- 従来のポジション1オーガニックがSERP表示直後に表示される割合: 約68%
- 最悪の10%のケースでは、ポジション1ですら約2画面分下に沈んでいる
- Tomの実例: 「compare desks」検索で Secret Lab がポジション1にランクされた — 巨大なAI Overviewの下、上端から1,400ピクセル下方の位置で
スマホはさらに状況が悪い。スマホのビューポートはノートPCより小さく、スマホでのポジション1はSERPロード直後にしばしば全く見えない — ファーストビューですら入らない。
反直感的なデータ: アウトバウンドトラフィックがなぜ崩れていないのか
ここで話が興味深くなる。視覚的にはオーガニックが折り返しの下に押しやられているのに、ウェブ全体でのGoogleからのアウトバウンドトラフィックはおおむね安定している。Tomは Rand Fishkin と同会場の別スピーカーが同様の指摘をしているデータを参照: Googleはいまだウェブジャーニーの圧倒的な開始地点である。
この矛盾 — 見た目は最悪なのにクリックデータは健全 — こそ、Tomがピクセルベースの指標を必要だと主張する理由だ。従来の順位ではこの2つを整合させられない。ピクセルポジションと結果の高さなら整合させられる。
これは新しい懸念でもない。TomはMozの同僚 Dr. Pete Meyers が2013年2月に同じテーマで書いた記事を参照した。SEO担当者はこの軌道を10年以上心配してきた。最近変わったのは規模とスピードだ。
ピクセルはどこへ行くのか: インテントが全てを決める
Tomは検索インテント別に分析を分解した。パターンはインテントによって劇的に変わる:
Navigational(指名)クエリ: 伝統的なオーガニックは依然として比較的高い位置に表示される。ユーザーが探している特定のサイトを、Googleはしぶしぶではあるが上の方に出してくれる。
Informational(情報系)クエリ: ここがAI Overviewの支配領域。AI Overview、画像パック、ナレッジグラフという3つの結果タイプがファーストビューの視覚的不動産のほぼ半分を占有する。これらは大きく、視覚的で、あまりクリックされない。フィーチャードスニペットは最上部に固定されているが、その出現頻度は減ってきている。伝統的オーガニックがファーストビュー内に到達できる場合でも、ぎりぎりのところに過ぎない。
Commercial(商業)クエリ: 商品中心の機能が支配 — 有料ショッピングカルーセルとPopular Productsが利用可能な不動産の半分以上を取る。このカテゴリーで、伝統的にPPC領域とされてきたフィードベース機能で勝負しないなら、SERP最上部から事実上不在ということになる。

円グラフが商業系SERPでピクセルが実際にどこに行くかを内訳化している: Paid 25.6%、Popular Products 20.9%、Organic 20.0%、AI Overview 9.4%、Shopping 9.3%、Images 8.5%、Other 6.3%。商業系クエリにおいて、伝統的オーガニックはファーストビュー領域の5分の1しか占めていない。
米国 vs 英国: 大西洋の向こう側のSERPはより攻撃的
Tomは米国と英国の商業系SERP構成を並べて比較した。米国はしばらく前から商品機能の支配性が顕著に強くなっている。英国・欧州市場は現時点ではややオーガニックフレンドリーに見えるが、Tomの予測 — 複数年のSEO戦略を立てる人にとっては妥当な前提 — は、英国のパターンが米国のパターンを追っていくということだ。
含意は明確: 英国・欧州のSEO担当者は、フィードベース業務と従来オーガニックの差がさらに縮まると予想すべき。商品フィード、構造化データ、ショッピング機能最適化への投資 — 伝統的にはPPC業務とされてきたもの — はオーガニック側でも必須になりつつある。
ショッピングとPopular Productsが出現する場合、データはこれらが単に高位置にあるだけでなく、利用可能なほぼ全空間を占めることを示している。サイズはプロミネンスを増幅する。
戦術プレイブック: SERP不動産を最大化する
講演の最終セクションで、Tomは3つの戦術的レバーをアウトラインした:
1. バーティカル別に正しいSERPを選ぶ
オーガニック可視性の機会はバーティカルによって劇的に変わる:
- オーガニックが下方に沈むバーティカル: Science and Nature(科学・自然)、Home and Garden(住宅・園芸)、Arts and Entertainment(アート・エンタメ)
- オーガニックが高位置に出るバーティカル: Beauty(美容)、Sports(スポーツ)、Leisure(レジャー)
これは全SEO担当者が、自分のトピッククラスター別に分析するべきこと — 同等性を仮定するのは危険だ。
2. リッチリザルトで結果の高さを増やす
ピクセルは順位に従うが、結果サイズにも従う。リッチリザルトは順位移動なしに視覚的フットプリントを拡大できる、SEO担当者がコントロールできる数少ないレバーの一つだ:

- FAQスキーマは結果を標準オーガニックリスティングより50%以上大きくできる
- 完全展開されたサイトリンクはサイズを劇的に拡大するが、これは主に指名検索でのみ獲得可能
- 同じ順位の隣接する2つのSERPポジションは、リッチリザルトの活用度合いだけで視覚的なプロミネンスが大きく異なる
Tomの実例として、Virgin Wines と Red Letter Days を対比 — 似たような順位だが、獲得しているリッチ機能の違いだけで視覚的プレゼンスは大きく異なっていた。
3. 順位ではなくピクセルで考える
Tomは『ロード・オブ・ザ・リング』のペレンノール野の合戦を引用した: レゴラスがムーマキルを倒した後、ギムリに「これでもまだ1体扱いだ」と言う。ギムリは20年経ってもまだそれを根に持っている — そして彼は正しい。順位だけのカウントは、巨大なリッチリザルト満載のリスティングと、小さな標準オーガニック結果を全く同じものとして扱う。これらは同じ資産ではない。視覚的アウトカムに基づいて何を最適化するかを選ぶべきだ。
戦略的シフト: クリックよりも可視性
Tomのより広い議論は戦術を超える。より大きな哲学的リフレーム: トップ・オブ・ファネルはクリックを伴う必要がない。
SEOはほぼ唯一、これを否定し続けてきたマーケティング領域だ。ブランドマーケティング予算は多くのチャネルで膨大なインプレッションを生成しながら帰属可能なトラフィックはゼロ — そしてそれは問題ない、なぜならインプレッションが重要だから。SEOがクリックベースの測定に固執してきた歴史は、常に異端だった。
Tomがこの点で挙げた2つの実例:
- 非常に類似した2つの商業系SERP(P&O Cruises 対 Cruise & Sail)が、広告の有無だけで完全に異なる視覚レイアウトになっていた。Royal Caribbeanは一方で2位、もう一方で1位 — しかし実際の可視性アウトカムは逆転していた、なぜなら順位だけでは周囲のピクセル文脈を見逃すから。
- これは、SEO担当者が有料とオーガニックの戦略を独立して立てられないことを意味する。可視ページは単一の資産であり、その上での可視性シェアはペイド + オーガニック + 機能の組み合わせで決まる。
このフレーミングは、AIが業界を押しやっている方向と整合する。AI Overviewはクリックを生むためのものではない — 言及される、引用される、回答の一部になることが目的だ。それは根本的にブランド可視性指標である。ピクセルシェアも同様。両方ともSEOを「クリックシェア」から「可視性シェア」へと押している。
明日からのアクション
1. 優先キーワードでピクセル監査を実行
SERPを順位だけで測るのを止める。トップ20〜50の優先クエリで、ポジション(上端からのピクセル距離)と高さ(結果のピクセルサイズ)を監査する。順位と可視性の差は、ほとんどのキーワードセットで予想以上に大きいはずだ。
2. コンテンツ計画前にバーティカル監査
SERPの形はトピックによって統一的ではない。ポートフォリオの中でファーストビューにオーガニック領域が残っているクラスターを特定し、コンテンツ投資を優先する。AI Overviewと商品カルーセルが支配するクラスターでは、ランクすることが正しいゴールなのか、それともAI Overview内で引用されるか、フィードに登場することがゴールなのかを再考する。
3. リッチリザルト、特にFAQスキーマに投資
順位を変えずに使えるレバーの中で、高さを増やすことが最もコントロールしやすい。FAQスキーマは最高のレバレッジ起点。サイトリンクは主に指名検索でのアウトカムだ。構造化データ監査をSEOプロセスの標準に組み込もう。
個人的な所感
Tomのセッションは、BrightonSEO Brighton 2026年4月で私にとって特に印象的だった4つのセッションの1つだ(他の3つはMalte Landwehr、Ryan Law、Ainhoa Lizarralde)。フレーミング自体が、ゼロクリック・サーチトラックで聞いた中で最も有用なリフレームだった。多くの「ゼロクリック」系セッションは同じ観察の周りを回っている — AI Overviewがクリックを食べている、ブランド可視性が重要になっている、など。Tomは違うことをした: 抽象的な不安を測定可能なフレームワークに変えた。ピクセル単位のポジションと高さは、両方とも監査可能、優先順位付け可能、改善可能だ。既存のSEOワークフローに測定の全面的再構築なしに自然に組み込める。
『ロード・オブ・ザ・リング』のセリフが頭に残った: 「これでもまだ1体扱いだ」。これがSEOレポートが今でもやっていること — 1,000ピクセルのリッチリザルト満載のリスティングと、50ピクセルの標準オーガニックリスティングを同じものとして扱う。これらは同じ資産ではないし、業界の測定フレームワークは追いついていない。
英国・欧州のクライアントが日本市場に参入する仕事をしている私にとって、これは2つの具体的な意味で重要だ。第一に、日本のSERPは独自のインテントと機能ミックスを持つ — 特に商業系バーティカルでは、独特な商品カルーセルや価格比較パターンがあり、英語圏との同等性を仮定せず、バーティカル別のピクセル分析が必要になる。第二に、TomがUSとUKで示したコマーシャルSERPギャップは、有用なプレビューパターンだ: 日本の商業系SERPは一部のカテゴリでは依然USより攻撃的でないが、軌道は同じ方向。それを念頭に計画する必要がある。
戦略レベルの示唆はより難しい。SEOレポーティングをブランドマーケティング流の「可視性シェア」指標と揃えるのは、ステークホルダーとの複数四半期にわたる対話だ。Tomのデータは、その対話の有用な出発点になる。
関連リソース
- セッション: How Low Can Organic Go?
- スピーカー: Tom Capper
- Tom Capper LinkedIn
- スライド: getstat.com/brighton26
- STAT Search Analytics
執筆: 打田彩夏
A-Digital Works CEO
本レポートはBrightonSEO Brighton 2026年4月30日のTom Capperセッション “How Low Can Organic Go?” を取り扱っています。
A-Digital Worksについて
A-Digital Works Ltdは、2023年にロンドンで設立された英国登記の日本語ローカライゼーション・SEOコンサルティング会社です。英語圏の企業が日本市場へ参入する際に、高品質な日英・英日ローカライゼーション、ブランドボイスの適応、日本市場向けSEO戦略を通じてサポートしています。
日本のエンタープライズ顧客をターゲットとするB2Bブランドと協業し、大規模な企業ローカライゼーション、日本市場向けコンテンツ制作、日本独自の検索・コンテンツ環境に合わせたSEOコンサルティングを提供しています。
著者について
打田彩夏(Ayaka Uchida) はA-Digital Works Ltdの創業者兼CEO。ロンドン(フィッツロビア)とマンチェスターで日本語語学学校 Nihon GO! Worldも運営している。日本、シンガポール、米国、英国を跨ぐ国際ビジネス開発において10年以上の経験を持つ。BrightonSEOには3回参加 — 2025年4月Brighton、2025年9月San Diego、2026年4月Brighton(2026年4月は奨学金枠で参加)。
青山学院大学法学部卒業。日本語と英語に堪能。現在はスペイン語、フランス語、ドイツ語を学習中。
お問い合わせ: a-digitalworks.com
LinkedIn: 打田彩夏
