TL;DR
- ユーザーの検索行動が変化: 「Tell me about…」型検索構造が前年比70%増(Google Year in Search 2025レポート)、AI由来セッションが前年比527%増(2025年1-5月、Search Engine Land)。キーワードリサーチだけでは意図を捉えきれなくなった
- Pabloは1つのチャット内で完結するAI主導のトラベル・ジャーニー(Awareness / Evaluation / Purchase)を見せた。ブランドがファネル下部の回答で表面化する瞬間まで、その会話の中身はブランド側からは完全に不可視
- プロンプトリサーチ・フレームワークは5段階 — Briefing / Data Dump / Schema Synthesis / Stem Creation / Prompt Creation — でLLM段階の周囲にハルシネーション防止のガードレール4種(Brand Temperature / Funnel Targets / Persona Targets / Technical Boundaries)を装着
- 米国のワークステーション周辺機器ブランド(キーボード、マウス、ウェブカム、ヘッドセット)に適用し、3本柱の GEO プログラムを設計: 50以上の GEO 記事を擁するラーニングセンター、Redditブランドページとアクティブスレッド参加とAMA(r/peripherals、r/CommercialAV)、インフルエンサーコラボを含むYouTubeサポート動画シリーズ
- 四半期比結果(Q1 2026 vs Q1 2025): AI Overview出現105%増、LLM由来リファラルトラフィック801%増
セッション情報
トーク題目: AI-Aware Citations: Researching and Mapping Brand Mentions
(デック表紙では「AI-Aware Citations: Mapping Brand Mentions to Every Funnel Stage」と、同じトークがやや異なる表現になっている。)
トラック: AI and Brand Citations
日時: 2026年5月1日(金)
会場: Brighton Centre, Kings Road, Brighton and Hove, BN1 2GR, United Kingdom
登壇者について
Pablo López — DEPT
Pablo(Twitter: @pablolopezm、デック: speakerdeck.com/pablolopezm)はグローバルデジタルエージェンシー DEPTでSEOおよびAI検索を担当。発表されたフレームワークは理論パッケージではなく、実クライアントの案件で構築・検証されたもの。
行動変化

Pabloは今や馴染みになった再フレーミングで切り出した: ユーザーはシナリオを説明している。我々はまだ文字列を追跡している(スライド3、「*keywords」)。エルゴノミック・マウスの例で進行を見せた:
- Simple query: “best ergonomic mouse”
- Elaborated query: “best ergonomic mouse for wrist pain?”
- Conversation: “I’m a digital illustrator working 10 hours a day on a Mac. My wrist is starting to hurt. I need a silent, ergonomic setup that won’t clutter my desk.”
議論を支える2つのデータポイント:
- 「Tell me about…」型検索構造が前年比70%増(Google Year in Search 2025レポート)
- AI由来セッションが前年比527%増(2025年1-5月、Search Engine Land)
この診断はBrightonSEO Brighton 2026の両日を通じて何度も繰り返されてきた。Pabloの貢献は診断ではなく、プロンプトをスケールでリサーチする方法論。
1つのチャットの中のファネル
Pabloのフレーミング例: UKから11月のホリデーを計画する1人のユーザーが、1つの連続したチャットセッション内ですべてを進行する。
Awareness フェーズ — “I’m looking to escape the UK cold in November. I want somewhere with guaranteed sun that is no more than a 5-hour flight away. What are my best options?” AIは目的地リサーチャーとして振る舞い、Canary Islands、North Africa、Red Sea、Sharm El-Sheikh を返す。
Evaluation フェーズ — “I’m in between Tenerife and Sharm El Sheikh for a one-week trip in November. Our budget is £2,000 for two people. Which destination offers better value for 5-star all-inclusive resorts?” AIは旅行アドバイザーになる: SUNRISE Arabian Beach Resort、Meraki Resort、Grand Rotana Resort & Spa。
Purchase フェーズ — “I’ve decided on Sharm El Sheikh for the second week of November 2026. Which UK travel agencies are currently offering the best packages for 5-star resorts there that include flights?” AIが具体的ブランドを浮上させる: TUI、Loveholidays、On the Beach。
戦略的論点: これらのブランドはどれも、ユーザーが1つの会話の中で3段階のファネル全体を進行したことを知らない。ブランドは最終回答に存在するか、見えないか。チャットが新しいファネルであり、その中身は大部分がブランドから不透明。
SEOは単一次元には存在しない
スライド12でPabloはプラットフォーム論点を明示する。従来検索はウェブコンテンツに完全に焦点を絞っていた(エルゴノミック・マウスSERPでのAmazon、RTINGS、Argos)。LLMは複数プラットフォームから同時に情報を引く — Web(RTINGS)、Reddit(r/MouseReview)、YouTube(プロダクトレビュー) — そして横断的に統合する。
これが重要なのは、各プラットフォームに固有の引用パターン、センチメントの基底値、コンテンツフォーマットがあるから。ウェブサイトだけ最適化することは、LLMが利用している入力の3分の2を逃すことに等しい。
プロンプトをリサーチする(キーワードではなく)

Pabloはプロンプトリサーチが「ではない」ものに時間を割いた:
- バニティ・メトリクスを追うものではない。高インテントのプロンプトのほとんどは検索ボリュームが1。なぜならユーザー毎に言い回しがわずかに異なるから
- すべてのユーザーの正確な言い回しを予測するものではない。組み合わせ的に不可能
- 従来型のキーワードリストを構築するものではない。キーワードがプロンプトを餌付ける、逆ではない
では何か: より賢いコンテンツ判断のためのリサーチであり、3つの軸を中心に設計される(スライド21):
- Funnel — ユーザーはコンバート準備ができているか? ブランドを認知しているか?
- Channel — ユーザーはどこでコンテンツを見つけているか?
- Sentiment — ユーザーはそのコンテンツについてどう感じているか?
3つの方法論的問題
Pabloは素朴なプロンプトリサーチが抱える3つの問題を指摘した:
#1 Search Volumes(検索ボリューム)。プロンプトのボリュームを予測するのは現状不可能 — 高インテントプロンプトのほとんどが検索ボリューム1。従来型のキーワードリサーチツールは集計された過去データに基づくが、それは言い回しのバリアントが多いプロンプトには適用できない。
#2 Prompt Uniqueness(プロンプトの一意性)。すべてのユーザーバリエーションをマッピングするのは不可能。ユーザーは毎回異なる文脈、トーン、制約を提供する。同じ商品カテゴリでも、部屋にいる全員が違う問いの立て方をする。
#3 Generic Data(一般的データ)。一般的なプロンプトリサーチはブランド・インテリジェンスを欠く。AIは特定のニュアンスを理解するためにテーラード(1st-party)データを必要とする。一般的データで戦略を組めば、一般的な戦略しか出てこない。
5段階フレームワーク
Pabloのフレームワークは米国のワークステーション周辺機器ブランド(キーボード、マウス、ウェブカム、ヘッドセット、マイク)向けに構築された — Strategic Themes でエルゴノミック・ペリフェラルが0.55のウェイト。プロセスは5段階で進行する。
Stage 1 — The Briefing
ブランド固有のファーストパーティ・データを取り込む: Scope Data(scope description、tone of voice、USPs、pain points)、Personas(Hybrid Worker、Creative Mind、IT Expert、Student)、Top Competitors、Product Categories、Relevant Topics。
Pabloの簡素化ブリーフィング例(スライド32): Market = United States; Tone = Conversational and human, Professional; Product Categories = Workstation Peripherals 0.5、Software 0.3、Connectivity 0.2; Strategic Themes = Brand Relevance & Comparisons 0.25、Sustainability 0.2、Ergonomic Peripherals 0.55。
この段階でLLMハルシネーションを防ぐためのガードレール4種も設定される(スライド33):
- Brand Temperature — branded vs non-branded プロンプトの比率
- Funnel Targets — ファネル段階毎のウェイト
- Persona Targets — ペルソナのバランス
- Technical Boundaries — 質問比率、ステム当たりのプロンプト数、最大トークン数
Stage 2 — Data Dump
オープンウェブ・シグナルを追加する。シードとしてのロングテールキーワード、競合のキーワードギャップデータ、そして — 最も有用なのが — GoogleからスクレイプしたPeople Also Ask質問。これらをコンテンツアイデアの源ではなく「実ユーザーが物事をどう言い回すか」のコーパスとして扱う。
Pabloのデータソース完全リスト(スライド38)は11種類: GSC data、keywords、conversion data、competitor data、PAA questions、Reddit data、merchant data、social signals、citation data、digital PR data、CRM integrations。
Stage 3 — Schema Synthesis
これが構造的な洞察。AIモデルが取り込まれたすべてのデータを分析し、スロット辞書を構築する — 変数と各変数が取り得る値の構造化されたセット。Pabloの例(スライド40):
[CATEGORY]→ Webcam、Microphone、Headset、Analog Keyboard…[AUDIENCE]→ Traveler、Creator、Student、Professional、Mac User…[QUALITY]→ Sturdy、Portable、Comfortable、Quiet…
このスロット辞書が次の2段階のエンジンになる。
Stage 4 — Stem Creation
プロンプトステムは変数プレースホルダー付きのテンプレート文。ステムは自然言語のフラグメント(ブリーフィングのペインポイントとトーンから)をスロット変数の周囲にプログラム的に組み合わせて生成される。例(スライド43):
- How to set up [PRODUCT] in a [USE_CONTEXT] without technical issues? — branded only
- Best [CATEGORY] for [AUDIENCE] — allow both
- Which [CATEGORY] do [AUDIENCE] actually recommend for [USE_CONTEXT]? — allow both
- Is there a [BRAND] [CATEGORY] that actually solves [PAIN_POINT]? — branded only
各ステムにブランド受容(branded only vs allow both)のタグが付くので、下流の制御が可能になる。
Stage 5 — Prompt Creation
変数がスロット辞書の具体値で置換され、具体的プロンプトが生成される:
ステム:「How to set up [PRODUCT] in a [USE_CASE] without technical issues?」
出力:「How to set up a webcam in a conference room without technical issues?」
そして最後の一手: セマンティック拡張。フレームワークが各プロンプトを現実的な人間のフレーミング(文脈文、会話的トーン、ペルソナ・ターゲットの制約)で包む。これでプロンプトは実際に人間が打ち込むものと区別がつかなくなる。例(スライド47):
“I’ve struggled with wrist pain for months while working in the office, what keyboard would you recommend to help prevent this?”
生成されたすべてのプロンプトは Funnel Stage(TOFU / MOFU / BOFU)、Sentiment(Explanatory / Instructive)、Branded vs Non-Branded で磨かれカテゴライズされる。ここから ProfoundのようなAI可視性トラッカーに投入され、回答エンジンをまたぐ引用パターンが計測される。
監査が浮上させたもの
Pabloはカテゴライズ済みのプロンプトを使って、AIが現状ブランドをどう見ているかを監査した。3つの発見(スライド50-52):
- LLMはハウツーと技術コンテンツを優先する — セットアップガイド、editorial content、technical papers。物事の「仕組み」を説明するのに役立つコンテンツを好む
- Reddit引用は懐疑的なセンチメントを持ち、サポートケース駆動。Pabloが具体的に挙げた2つのサブレディット: r/peripherals(「How do I troubleshoot persistent latency on a 2.4GHz wireless receiver in a crowded open office?」)と r/CommercialAV(「Does the Pro Video Bar’s build quality actually justify the higher price point?」)
- YouTube引用は主にプロダクトデモが駆動。例のプロンプト:「Which iPad stylus has the lowest latency for digital illustrators?」 — ハンズオン・テスト動画を浮上させる
3本柱の Holistic GEO 戦略
3つの発見が3つのワークストリームに翻訳された(スライド53):
- 新規のラーニングセンターをブランドサイトに構築 — 監査で浮上した引用ギャップに対応した50以上のGEO記事、ユーザー・ニーズを中心に構造化
- Redditブランド・プレゼンス — 公式ブランドページの更新、スレッドでのアクティブな参加、AMA(Ask Me Anything)の開催
- YouTubeサポート動画シリーズ — ビデオ・ストーリーテリング、プロダクトデモ、インフルエンサー・コラボレーション
四半期比結果(Q1 2026 vs Q1 2025): AI Overview出現105%増、LLM由来リファラルトラフィック801%増。

クロージング・テーゼ
Pabloは記憶に残る2行で締めた(スライド55-56):
- 「AIはページをランクしない、エビデンスを統合する」。最適化の単位がページからエビデンスへ移行した
- 「Generic strategies get generic results — trust your data」。フレームワークの質は Stage 1 のファーストパーティ・インプットの質に等しい
個人的な学び
BrightonSEO参加は今回で3回目(2025年4月Brighton、2025年9月San Diego、2026年4月Brighton — 直近の1回は奨学金参加)。PabloのセッションはDay 2で見たなかで最も実装可能性が高い方法論的貢献だった。
具体的に持ち帰るもの:
- 本当に新しいのは Schema Synthesis であって、Stem Creation ではない。取り込んだ雑多なデータから構造化された変数とその有効値を抽出する「スロット辞書」 — これがあるからこそ、その後のプロンプト展開がカオスにならず制御可能になる。これまで見てきたプロンプト生成アプローチ(自分のものも含む)の大半はこのステップを飛ばしてフラットなリストを作ってしまう。これを独立した段階として、固有のロジックで切り出したのが、その後すべてを成立させている要
- ガードレール4種(Brand Temperature、Funnel Targets、Persona Targets、Technical Boundaries)はクライアントが最初に質問すべき部分。これらがあるからこそ、LLM駆動のフレームワークが「80%オフブランドの1,000プロンプトリスト」を生まずに済む。オプションではない
- Data for SEOのPeople Also Ask抽出を「フレージング・コーパス」として使うのは、静かだが重要な再フレーミング。PAAは実ユーザーが物事をどう言い回すかを教えてくれる — まさにセマンティック拡張段階が必要としているもの
- Reddit懐疑的 / YouTubeプロダクトデモのセンチメント分裂は、Day 1のJon Earnshawの主張(ブランドは深さと本物のコンテンツを通じて引用を獲得する)と整合的。Pabloのデータ主導バージョンが、Jonの議論に定量的指し示しを与える
- 105% / 801%の数字は単一クライアントの単一四半期 — 方向性の証拠としては有用だが、Tom Capperのピクセル・ポジション研究、Ryan Lawの約75,000ブランド相関研究、Philip Armstrongの200億イベント・パネルデータと同等の重みではない
私が参加してきたBrightonSEOで、最も強いセッションは常に、既存コンセンサスを洗練するのではなく本当に新しい分析的貢献を導入したセッションだった。Pabloのセッションは堅実で、コピー可能で、現場エージェンシーの実践 — クライアント案件で月曜からパイロットできるタイプの方法論。これは本物の貢献である、たとえパラダイム・シフトではないにせよ。
関連リソース
- 登壇者プロフィール: Pablo López (BrightonSEO)
- Pabloのデック (Speaker Deck)
- DEPT — PabloがAI検索に取り組むグローバルデジタルエージェンシー
- Data for SEO — People Also Ask抽出のソースとして参照
- Profound — 生成プロンプトから引用パターンを計測するAI可視性プラットフォーム
- Ryan Lawのセッションレポート — AI検索エンジンが機械的にどう動くかのより深い解説で、Pabloのフレームワークがその上に乗る
- Philip Armstrongのセッションレポート — プロンプトリサーチが重要である理由をフレーム化する消費者ジャーニー行動の実証的視点
著者について
打田彩夏(うちだ あやか) — A-Digital Works Ltd 創業者兼CEO。Nihon GO! World(ロンドン Fitzrovia & マンチェスター)創業者。日本、シンガポール、米国、英国での国際ビジネス開発10年以上。BrightonSEO参加3回(2025年4月Brighton、2025年9月San Diego、2026年4月Brighton — 直近の1回は奨学金参加)。青山学院大学法学部卒。日本語・英語ともにビジネスレベル、スペイン語・フランス語・ドイツ語を学習中。
Connect: a-digitalworks.com | LinkedIn
A-Digital Worksについて
A-Digital Works Ltdは、ロンドンを拠点とする日英SEOおよびEN↔JAローカリゼーションコンサルティング会社。UK・EU・米国企業の日本市場参入を支援。サービスは、日本語キーワードリサーチ、コンテンツローカリゼーション、テクニカルSEO、市場参入戦略にわたる。主要案件: Descartes Systems Group(カナダ物流テック) — 物流システム、EDIシステム、配車システムを軸とした日本市場SEOプログラム全般。
本レポートは、2026年5月1日(金)BrightonSEO BrightonにおけるPablo Lópezのセッション「AI-Aware Citations: Researching and Mapping Brand Mentions」をカバーしています。
