海外進出で失敗しないためのWebマーケ戦略とグローバルSEO:欧州ローカライズの落とし穴

欧州展開を進める日本企業が「翻訳と決済対応をすればOK」と思い込み、ユーザーに不信感を与えたり、法的リスクを抱えたりするケースが多発しています。この記事では、技術・法制度・言語・ユーザー行動の4つの観点から、欧州向けローカライズで起きがちな具体的な失敗と対策を紹介します。


1. 技術と設計で起こりがちなミス

欧州向けにWebサイトを展開する際、日本企業が見落としがちなのが「基本的な設計の差」です。たとえば単位や日付の表記において、欧州ではメートル法(cm、kg、℃)が標準ですが、UKでは一部でインチやポンドが併用されています。また日付表記もDD/MM/YYYYが一般的で、日本や米国の形式とは異なり、誤解やトラブルの原因になります。

実際に、日本のカレンダー表記(例:2024/07/01)をそのまま使ってしまい、欧州ユーザーから「1月7日と誤認した」と指摘された事例があります。さらに、ECサイトのサイズ表記がインチとセンチの混在になっていたことで、返品が増加したケースも報告されています。こうしたミスは、サイトの信頼性を損ない、結果としてCVR(コンバージョン率)の低下を招きます。

ブラウザやOSの使用傾向も日本とは大きく異なります。欧州ではChromeが圧倒的に主流で、iPhoneユーザーの割合は日本よりも低めです。そのため、AndroidやWindows環境での動作確認がより重要になります。iOSでもSafariは使われていますが、国別シェアは30%前後に留まっており、日本ほどの存在感はありません。こうした違いから、デザインやフォント、レイアウト崩れが発生する環境も異なり、複数ブラウザ・複数デバイスでの検証は必須となります。また、ドイツ語やフランス語など、言語の構造によってUIに大きく影響するため、翻訳後のレイアウト調整を前提にした設計が求められます。

Cookieバナーについても「Accept all」だけの簡易な構成では済まされません。GDPRでは、ユーザーが目的ごとにクッキーの利用を選別・同意できる設計が求められています。特にドイツでは、これを怠った企業に対して罰金が科された例もあり、文言やレイアウトの細部まで法的・UX的な配慮が求められます。デザインが粗雑だったり、訳文が不自然だったりするだけでも「信頼できないサイト」と判断され、離脱率が上がります。Cookieバナーは単なる規制対応ではなく、最初のブランド印象を左右する重要な要素です。


2. 法制度の誤解と不足

欧州における法制度対応は、翻訳以上に「現地の法文化を理解すること」が重要です。VAT(付加価値税)はEU共通の仕組みですが、税率や軽減税率の範囲、請求書の要件は国ごとに異なります。たとえばUKでは標準税率が20%、ドイツでは19%、フランスでは20%とバラつきがあります。軽減税率やゼロ税率の対象品目も国によって異なり、単純なシステム移植では対応できません。

GDPRも同様に「EU共通規則」ではあるものの、執行の厳しさには大きな差があります。ドイツやフランスでは、Cookieバナーの設計ミスやプライバシーポリシーの不備に対して、実際に数千ユーロの罰金が科された事例があります。違反時には最大で2,000万ユーロ、または年間売上の4%という高額な罰則が科される可能性があるため、法対応は表面上だけでなく、設計・運用レベルでの理解と準備が必要です。

実際、日本国内から欧州向けにMeta広告やGoogle広告を配信しようとした企業が、GDPRの規制とプラットフォーム側の仕様制限の両面で広告を正常に出せなかったという事例が複数あります。特にMeta(InstagramやFacebook)は、EUユーザーに対してCookie同意が取得されていない状況では、リターゲティングなどのオーディエンスデータの活用を禁じており、さらにEU域外の広告主に対しては広告配信自体が技術的に制限されることもあります。Googleでも同様に、Consent ModeやIAB TCF v2.2に対応していない環境からの配信は制限対象となりやすく、EU外からの広告出稿は“理論上は可能でも、実質的には非常に難しい”状況です。ただし、対処法がまったくないわけではありません。たとえば、EU域内に法人や拠点を持つ現地パートナーを介して配信を行う、またはConsent Management Platform(CMP)を導入してGDPRに準拠した環境を整えることで、一部のプラットフォームでは配信が可能になる場合もあります。状況に応じた慎重な設計と体制整備が求められます。

また、欧州では「企業が誰であるかを明示すること」が法的に義務付けられている国も多くあります。たとえばドイツでは「Impressum」、フランスでは「Mentions légales」と呼ばれる法定情報表示が求められ、会社名、登記住所、代表者名、VAT番号、商業登記番号、連絡先などをWebサイトに明示する必要があります。これを怠ると、広告審査に通らないばかりか、罰金や法的警告の対象となる可能性もあります。B2Bでは、こうした法定情報がないだけで「信頼されない企業」と判断されることもあり、法制度対応はビジネスの入り口そのものです。


3. 言語と翻訳でありがちなズレ

英語を出せば欧州の多くの人に通じる──その発想自体は間違っていません。ただし「通じる」ことと「信頼される」ことは別です。たとえばオランダやスウェーデンなど、英語理解度が高い国でも、行政や金融、教育、医療などの分野では現地語での対応が当たり前であり、英語のみでは不十分と判断されることがあります。

また、検索エンジン上で発見されること(SEO)と、翻訳された言葉の自然さにも注意が必要です。特に日本語から直訳した言葉をそのまま使ってしまうケースが多く、気づかないうちに“誰も検索しない表現”になっていることがあります。たとえば製品名や機能名を「知能型端末」や「高度な情報処理装置」などと訳してしまうと、実際には現地ユーザーがまったく使わない言い回しになり、検索に引っかからないという事態が起こります。単語の選定は、ネイティブの言語感覚と市場での実際の検索行動を調査して行う必要があります。

さらに、UI設計における翻訳の影響も無視できません。ドイツ語やフランス語は英語や日本語に比べて1語が長くなりがちで、ボタンやナビゲーションが想定よりも広がる傾向があります。これにより、レイアウト崩れや表示の不具合が発生し、プロフェッショナルでない印象を与えてしまう恐れがあります。見た目だけでなく、言語とUIの相互作用を踏まえた設計が求められます。


4. ユーザー行動の違い

日本と欧州では、ユーザーが「信頼する基準」や「情報を取得する経路」にも大きな違いがあります。たとえばレビュー文化。欧州ではTrustpilotやGoogleレビューなどの第三者評価を非常に重視する傾向があり、レビューがないサービスは「無名」「信頼できない」と見なされてしまいます。特にドイツや北欧ではこの傾向が顕著で、レビューの有無がそのまま売上に影響するケースも少なくありません。

問い合わせの手段にも違いがあります。欧州ではInstagramやFacebookのDM、コメント欄で質問する文化が根付いており、公式フォームよりもSNSでの応答を期待するユーザーも多くいます。企業アカウントの運用方針次第で、「対応が遅い企業」「反応が冷たいブランド」と見なされるリスクもあるため、チャネル設計と運用体制の整備は必須です。

さらに、決済手段の違いも大きな壁になります。たとえばドイツではKlarna(後払い)やSEPA(銀行引き落とし)、PayPalが定番です。一方で、フランスではCarte BancaireやPaylib、UKではクレジットカードやStripe、Apple Payが主流です。日本企業が提供する決済手段が現地ユーザーにとって「見慣れないもの」だった場合、購入までたどり着く前に離脱されることも少なくありません。決済ページは「信頼と利便性の最終関門」として、国別に最適化する必要があります。


まとめ:欧州ローカライズは「翻訳」ではなく「設計」

欧州向けサイトを成功させるには、単なる翻訳や決済対応ではなく、技術・法律・言語・文化すべてに通じた設計が必要です。

A-Digital Worksでは、翻訳+法対応+検索対策+UX調整+マーケットごとの改善提案を一括サポートしています。

お問い合わせ:info@a-digitalworks.com
著者:打田彩夏(A-Digital Works Ltd CEO)

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