要約
- 「これまでの検索 と AI検索」という区分けは意味がない。すべてがAI検索である
- 検索クエリの分散が爆発的に増加:1回の検索で裏側では8〜12回の検索が走っている(2025年4月時点では1回だけだった)
- GoogleとBingが今もAI検索の中核。ほとんどのLLM回答の元となる
- 複数のプラットフォームでAI露出を測るには、従来の指標を見直す必要がある
Rayさんのプレゼンは、今年4月のBrightonSEO(イギリス)のセッションでも特に印象的で、私のお気に入り講演だったので、5ヶ月経った今、どんな進展や新しい知見を共有してくれるのか、とても楽しみにしていました。4月の講演では、AIの回答エンジンとオーガニック検索の関係性についてお話ししてくれていました。記事:the relationship between AI answer engines and organic SERPs.
具体的には、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)の仕組みを詳しく解説し、その具体的なデータについても提示していました。AI回答の約80%がGoogleとBingのインデックスに依存していて、Perplexityに至っては約55%がGoogleソースから情報を引っ張ってきているという内容で、技術的な基盤の説明が非常に充実しているセッションでした。
今回のセッションは、そうした技術的な理解を前提とし、より実践的な活用方法に焦点を当てているものでした。「RAGとは何か」ではなく、「RAGが主流となった世界で、どう測定し最適化していくか」という話でした。
登壇者について
レイ・グリセルフーバー/Ray Grieselhuber – CEO, ディマンドスフィア/DemandSphere
DemandSphere社、代表取締役社長。DemandSphereは検索結果画面から掲載順位や表示内容、リンクなどあらゆるデータを一括取得し、AIアンサーエンジンとオーガニック検索結果の関係性を可視化するモニタリングツールを提供している。特にRAG(検索拡張生成)と複数プラットフォームでの検索可視性の分析に強みを持つ。
コアとなる主張:誤った2つの対立
Rayさんの主な主張は、最近、このSEO業界でよく語られている考え方に対して疑問を投げかけるもので、「従来型のGoogle検索」と「AI検索(その他すべて)」という区分けは、「誤った2つの対立」を生み出していると言うことでした。

つまり、今日「AI検索」と呼ばれる技術革新のほとんどは、実はGoogleが先駆けて取り組んできたものであるから、従来型とAIという区別ではなく、本当の違いはユーザー体験とインターフェースにある、ということなのです。

大きな技術的変化:検索クエリの分散的な爆発
4月以降の最も大きな変化は、クエリの複雑性が劇的に増したことです。以前はAIシステムが検索エンジンに対して1回だけ問い合わせていたのが、Rayのデータによれば、現在は1回のユーザー検索に対して裏側で8〜12回もの検索が走っている、とのことです。

この「クエリの分散」は掛け算的な効果を生み、検索の経済性を根本から変えてしまったのです。ユーザーが1回質問するたびに、バックエンドでは複数の検索が走り、検索エンジンへの負荷が膨大に増えているのです。

これがGoogleがデフォルトで100件の検索結果を表示する機能を廃止した理由だとのこと。AIによるクエリの増幅で、計算コストが持続不可能なレベルになってしまったのだそうです。

統合的アプローチの枠組み
Rayが今回、主に語っていたことは、バラバラなデータソースを横断して「統合的に見る仕組み」を作ることでした。彼の言う枠組みは、以下の3つの原則を中心としています。
コアになる指標は「人からの注目(Human Attention)」:「私たちは皆、人からの注目を追いかけています。それをトラフィックと呼んだり、インプレッションと呼んだりしますが、これは、結局は人から注目を浴びる、ということです」。この視点があれば、プラットフォームをまたいだ測定を統一できるでしょう。
モデル回答と検索回答の違いの理解:チームは、モデルが直接答える回答(学習データから)、リアルタイム検索による回答、そして両方を組み合わせたハイブリッドの回答を区別する必要があります。
データを連携させる仕組み:Search Consoleのデータ、GA4のアナリティクス、ログデータ(取得できる場合)、AI引用の追跡、そしてプラットフォーム横断での露出シェアを連携させるデータ基盤を構築することです。
個人的な感想
今回のセッションで最も印象的だったのは、技術的な説明から戦略的な実装へと進化していたことです。4月のセッションではRAGの仕組みを理解してもらうことに重点を置いていましたが、今回はその基盤知識があることを前提に、実践的なビジネス活用へ直接進んでいました。
指標としての「人からの注目」という考え方は、「人からの注目」を軸にすれば、バラバラだった測定がシンプルになり、Google、ChatGPT、Perplexity、新しいプラットフォームなど、どこで見られても「結局は人の注目を集めたかどうか」という共通の物差しで測ることができるので、複数のプラットフォームでの露出管理もずっと楽になると思いました。
クエリ分散の話は4月には出てきませんでしたが、これは検索の仕組みそのものが根本から変わったことを意味していると思います。インデックスコストや検索インフラで業界全体が直面している課題の多くは、この変化で説明がつきますし、従来型検索とAI検索の「誤った2つの対立」についてのRayさんの視点は、最適化についての考え方を変えてくれると思います。それぞれに、別々の戦略を立てるのではなく、AI機能が組み込まれたあらゆる検索インターフェースでのユーザー体験を、一貫して考えるべきなのだなと思いました。
関連情報
- 2025年4月の Brighton SEO Brigtonのレポート: AI Answer Engines and Organic SERPs
- Rayさんのスライド
- 登壇者: Ray Grieselhuber
Written by Ayaka Uchida
CEO, A-Digital Works
この記事は2025年9月24日に開催された BrightonSEO San Diegoの Ray Grieselhuberさんによる “It’s ALL AI search now: building a unified view for growth” セッションを元に記載しています。
